会長挨拶「ワクワク感溢れる学会へ」

阿部 孝之
本会2026年度会長
富山大学研究推進機構
水素同位体科学研究センター
教授

 本年度の電気化学会会長を仰せつかりました富山大学の阿部です。会員となってから早40年程、電気化学会には大変お世話になってきました。今年度は最後のご奉公のつもりで会長の職責を果たす所存です。本会会員の皆様方には、この1年間ご協力の程、何卒宜しくお願いいたします。

 さて、現在、エネルギー問題、環境問題、AI、地政学的な紛争等、世界情勢は人類がかつて経験したことがないほど目まぐるしく変化しています。特にエネルギー問題は我が国にとって早急に解決しなければならない重要な課題です。エネルギー資源をほとんど持たない我が国は、その資源をほぼ全て海外からの輸入に頼っています。この状況は我が国の生殺与奪権を海外に与えているのと同義です。大学の授業でこのことを学生に話しても、生殺与奪権の意味を知らない、あるいは、そのような権利を行使してくる国なんてあるわけがないと異口同音の答えが返ってきます。しかし、これは紛れのない事実であり、既に歴史が証明しているのです。本会は各種電池、水分解、光触媒、等のエネルギー関連研究が盛んであり、多くの成果を世界に発信しています。また、その一部は既に社会実装されており、電気化学会にとって大変喜ばしいことです。

 ここで少し昔話をさせてください(年を取った証拠ですね(笑))。私が若かった頃の電気化学会は新たな専門委員会・研究懇談会がいくつも立ち上がるなど華やかな時代であり、常にワクワク感を持っていたように記憶しています。しかし今はどうなのでしょうか?現在の専門委員会・研究懇談会はその頃とあまり変わっていない様に見えます。もちろん、個々の中身は時代と共に推移・発展していることは認識していますが、会員皆様の日頃の研究活動から考えると、斬新で魅力ある専門委員会・研究懇談会がこれまであまり誕生していないことに驚きを隠せません。率先して新たな分野を立ち上げることに二の足を踏むのはある程度理解できます。しかし、自ら積極的に創造することで、未来を切り開くことは大変貴重なことだと思います。是非会員の皆様には新たな分野を創造し、自ら未来を形作っていただきたいと切に願います。

 学会の活動は上記したようには会員皆様の活躍に依存する面が大きいですが、その一方で、学会活動を陰ながら支えてくれる事務局の存在も本会の発展には極めて重要であると思います。他学会の事務局に比べ少人数であるにも関わらず、現在まで事務局職員の献身的な働きにより、学会活動は円滑に運営されています。しかしながら、事務局職員の高年齢化や円滑な職務交代・引継ぎ等の問題も見え隠れしています。事務局の安定的な継続には、これら問題に対する何らかの施策が必要な時期に近づいているのかもしれません。即効性のある施策はなかなかありませんが、今年は問題解決に向けた一歩を踏み出したいと考えています。

 2033年電気化学会は設立100周年を迎えます。5年程前にも、本紙「展望」でも書きましたが、ジェフ・ベゾス氏の言葉「我々は常に創業日にいる。それ故、皆がワクワク感を持って同じ方向に向かってチャレンジできる」を再度書かせて頂きます。私もワクワク感こそが、創造と成長の源であると思っています。100周年は輝かしい行事であり、私も皆様と一緒に盛大に祝いたいと思いますが、学会にとってはあくまで節目の1つです。その先新たな100年に向かって輝き続ける電気化学会とするためにも、ワクワク感溢れる電気化学会を創っていきたいと思います。今年度がその端緒となれば幸いです。