会長挨拶「産官学をワンチームにする電気化学会へ」

本会2021年度会長
桑畑 進
大阪大学 工学研究科
教授

昨年度から引き続き、もう1年会長役を務めさせて頂きます。前年の「展望」に「ワンチーム電気化学会を創る」と題し、7つの支部、8つの専門委員会、12の研究懇談会、そして本部を、財政面でもカバナンス面でも良い形でひとつにしたいとの希望を書きました。支部長、委員長、主査らのご協力のお陰で、具現化し始めております。夢のある研究アイデアのある研究者を支援する「若手・中堅研究費助成」および国際研究集会を支援する「国内外国際研究集会助成」を新設し、従前からある「若手研究者の国際交流支援」の3つについては、公益法人認定法で認められている「特定費用準備資金」を使って運用しております。すなわち、支部・委員会等の活動で収益が出て、それを学会にて有効に利用したいという場合、特定費用準備資金に積み立て、上記の本会会員の研究や国際交流の活動に役立てるという仕組みを作りました。まさにone for all, all for oneのワンチーム精神の形であります。この仕組みの拡張を引き続き検討しており、それらが実現すれば、1年前に書きました「支部、委員会、懇談会等が黒字で潤沢なのに、本部が赤字続きで学会が破産」なんて冗談みたいな事を避けることができ、明るい展望が開けてくると期待しています。

さて、タイトルの話を移したいと存じます。1983年に電気化学会の会員になりました私は、あと2年で電化40年生であり、電気化学会のことは知り尽くし、だから会長職を務めているのだ、と勝手に思っていたのですが、知らない事が多々あることを思い知らされました。そのひとつが会員の構成です。電気化学会の会員は正会員、学生会員、シニア会員、賛助会員があり、正会員の中には、個人会員、法人会員、特別法人会員、名誉会員があります。法人会員と特別法人会員は主として民間企業であり、社員等の構成員が学会活動に参加できます。この会員の種類を基に、たとえば「学生会員が卒業して会社に入ると、法人会員として学会活動できるから、個人会員に切り替えない」というような議論をしばしば聞くことがありました。それゆえ、何となく個人会員は研究所や大学等の官・学の方々が主である、というイメージがありました。しかし、ある機会に個人会員の構成を事務局に調べて貰ったところ、①大学・学校44%、②民間企業43%、③官公庁/公的機関6%、その他7%であり、産と学がほぼ同数であることを知り、大変驚きました。

田中前会長の時(2019年度)に、会長の発案で「特別法人企業との意見交換」というのを開催し、2020年度もオンラインで行いました。会社の方々の生の声を聴く貴重な経験でありましたが、何よりも印象深かったことは、企業の方々が学会を大事に考えて頂いており、期待が非常に大きいことでありました。私が副会長(2014–15年)の時にも、企業の方々との協力関係についての議論がありました。しかし、それは官・学が主である学会としての議論でありましたが、上記の会員構成を知り、「産官学ワンチームの学会を創りたい」という新たな気持ちが湧き出てきました。その一歩として、発表者を個人会員と学生会員(含 大会学生会員)に限っていた春季大会を、本年の88回大会(オンライン)から、特別法人会員、法人会員も発表できるようにいたしました。

SDGs、カーボン・ニュートラルの必然性が大きく言われる昨今、電気化学の役割はますます重要になってきております。実用化を見据えた基礎研究を具体的に行えるこの分野において、本会を、基礎研究から応用研究、そして製品開発への流れを支えることができる、産官学が一体化した学会とすべく、本年度も知恵を絞っていきたいと存じますので、会員の皆さまのご理解とご協力をよろしくお願いしたいと存じます。