会長挨拶

電気化学会会長
渡邉 正義
(横浜国立大学)

電気化学会は1933年にその前身が発足し、今年で創立86周年目を迎える。電気化学の歴史はその学術の深化とともに、日本の産業化の歴史とも符合する。現在、グローバル化の進む世界レベルの問題である、エネルギー・環境問題、食料・水問題、ヘルスケアなどの分野で、電気化学が重要な役割を担うことは間違いない。二次電池・燃料電池・太陽電池、水電解と水素製造、化学センサー、各種膜分離技術、光触媒、バイオセンサー、有機電気化学など、キーワードを挙げただけで容易に理解できる。一方、日本の社会では、急速な少子高齢化、政府の財政赤字、産業構造の変化などの問題が待った無しで迫っている。これらの問題に電気化学はどう対峙すれば良いのか?難しい問いである。しかし、多くの化学系学会がその会員数を急速に減らしているのに対し、電気化学会は4,000-5,000名の会員を維持しており、その期待される役割を果たしたい。

学会の使命である研究成果の公表や討論の場の提供、知識・技術の普及と啓蒙、産学連携などを支える上で、学会事務局の役割は大きい。日本の学会では会員1,000名に学会職員1名が標準と言われている。本学会の場合の職員数は4-5名ということになる。この少人数で学会事務を遂行し、さらにその職務の指揮命令系統を確立することは難しい。職員の年齢構成、能力育成、キャリヤパスなども考える必要もある。本学会は長い間、一定の事務局職員の献身的な貢献によって運営されて来たが、現在その転換期を迎えている。現状ではまだ新たな定常状態になったとは言い難く、この点に関し、会員のご理解とご協力を切にお願いしたい。

またこれまでに学会の赤字体質を改善すべく学会費の値上げをさせて頂いたが、それ以外にも大会の予稿集の電子化、論文の電子ジャーナル化(Electrochemistry)と会誌(電気化学)の季刊化、さらに事務局の移転と一部業務のアウトソーシング化など大きな改革を矢継ぎ早に進めている。特にこれらの業務改革への現事務局職員の貢献は大きい。これらの改革によって1,000万円以上の大きな節約効果を生んでいる。一方、これらの改革は、定着するまで、会員の皆さまに変化への順応をお願いすることになり、ご不便をお掛けするとも思われるがご寛容の程をお願いしたい。

しかし今、もう一度学会の意味と役割を思い直して頂きたい。学会は、学術的さらにはその社会還元に関して興味や意思を同じくする仲間が、協力し、議論をするために手弁当で集まったことに原点がある。規模が大きくなり、組織が大きくなると、もちろん学会事務局は必要であるし、その任務は学会員へのサービスである。ここで、会員個々が独立自尊の精神をもって手弁当で集まることの意味をもう一度思い出して頂き、学会を職員共々盛り上げていくことを会員一同で確認したい。科学技術の世界は世界共通である。電気化学の世界の中で日本のプレゼンスを維持向上させるためにも、新しい時代への学会の変革が今求められているし、それを遂行することが会長としての任務と考えている。