会長挨拶 「ワンチーム電気化学を創る」

本会2020年度会長
桑畑 進
大阪大学 工学研究科
教授

本会には、8つの専門委員会と12の研究技術懇談会があります。設立の目的や経緯は多種多様であり、設立過程で本会の会員ではない方もメンバーに加わっているケースもあります。2012年の公益法人化までは、「それは、そういうものである」と普通に受け止められ、公益社団法人となっても特段に疑問視されることもありませんでした。それぞれの委員会や懇談会内の組織や活動の変化がだんだん乏しくなり、会の新規設立も長らくない状況の中、2016年度に会長を務められた西原教授は、「専門委員会・研究技術懇談会の変化があまりなく、休火山のようである」と書いておられます(本誌84, 209 (2016))。また、本会本部の財政に関して、2014-15年度に副会長を務められた大坂教授は、本部の財政の赤裸々なグラフを示して「学会のアクティビティを維持・向上しつつ、収入を増加し支出を抑えることが求められている」と書いておられます(本誌83, 1 (2015))。

本会の理事会でこのような問題点が浮上し、真剣な議論が開始された時に、私は2015-16年度の副会長を仰せつかりました。問題点を吟味し策を講じていく中で、本部の経理が赤字であるのに、高いアクティビティを維持している支部、委員会、懇談会のお蔭で本会全体の経理は黒字であるという不思議な矛盾点が浮上してきました。公益社団法人である本会は、余剰金をどんどん蓄えることはできません。すなわち、これまで通りに各支部、委員会、懇談会がインディペンデントに活動と経理を続けるなら、本部は赤字財政を続けざるを得ず「2019年度には電気化学会は破産する」という恐ろしい試算が出てきました。

西原会長、宇田川会長、渡邉会長、田中会長の強力なリーダーシップの下、財務委員会を作り、高見澤事務局長による財務分析のデータを基に具体化された方策が「電気化学会ワンチーム化」でありました。そして、支部長や専門委員会、懇談会の世話人代表の方々に「経理状況を報告せよ」、「黒字にするな」、「赤字にせよ」、「遊休財産を削減せよ」「特定費用準備資金を利用せよ」等々、多くの依頼をしてきました。おそらく、本稿を読んで当時を苦々しく思い出されている会員もおられる事でしょう。

2020年の早春、我々が身近に経験したことの無い、新型ウィルスのパンデミック(世界的大流行)が起こりました。2月末から3月に入った頃から急激に拡大し、それを回避すべくほぼ全ての学術会議の開催が中止されました。本会の大会も例外ではなく、業務執行理事会および理事会の半数のメンバーが入れ替わる3月6日の総会が目の前でしたが、作業や責任の押し付けなど微塵もなく、新旧メンバーが一体となって連日のメール会議。開催か中止かの激しい議論、中止を決定した後は、大会学術企画委員会と連携してWeb討論の可否と具体的方法の検討、そして優秀学生発表賞の選考方法等々、300通を超えるメールが飛び交されました。その結果、各専門委員会や研究技術懇談会の多大なる協力を得てWeb討論を開催し、優秀学生発表賞の選考と受賞者決定も無事に終えて、安堵しました。これら一連の経緯を見た時に、電気化学会がワンチームとなれば、これほどの難局に面しても短期間でより良い方向へ持って行けるのだという本会の力強さを実感いたました。この時に、本会を完璧にワンチーム化することが、私のミッションだと確信しました。そのためには、もう少し解決すべき課題があります。それが済めば、魅力ある本会の明るい展望を、さらに明るくできるのだと信じて邁進いたしますので、会員の皆さまにはご協力のほど、何卒よろしくお願いしたいと存じます。