「Electrochemistry」・「電気化学」に関するアンケート(2019年3・4月)集計結果について

「Electrochemistry」・「電気化学」関するアンケート(2019年3・4月)集計結果について

2020年6月4日

公益社団法人電気化学会 編集委員会

Electrochemistry 編集委員長 加納健司

電気化学 編集委員長 篠原寛明

 

冊子体で発行されていたElectrochemistry(電気化学および工業物理化学)の分冊化により2018年からElectrochemistryのオンライン化および季刊誌「電気化学」が発刊されました。この発刊方法の変更に対する会員の皆様のご意見を編集にフィードバックすべく、金村聖志前編集委員長の下、2019年3月開催の電気化学会第86回大会(於:京都大学)から約1ヶ月にわたりアンケート調査を行いました。

回答総数は366件にのぼり予想を上回るもので、また非常に幅広い立場・分野からご意見を頂戴することができました(下表をご参照ください)。アンケートに回答いただいた皆様には厚く御礼申し上げます。戴いたアンケートのご意見の中にはすぐに対応できるものもあり、2019年から始まった両誌の改革にフィードバックさせていただいております。

今回、アンケート結果の公表と頂いたご意見のうちの中から一部回答させていただくことに致しました。今後とも電気化学会出版誌にご支援をいただきたく、宜しくお願い申し上げます。

pdf版はこちら「Electrochemistry」・「電気化学」に関するアンケート(2019年3・4月)集計結果

 

会員種別(366 件の回答)

個人会員        318名(86.9%)

学生会員           34名 (9.3%)

法人会員               6名 (1.6%)

名誉・終身会員   5名 (1.4%)

非会員         3名 (0.8%)

 

所属(366 件の回答)

学界/教職員     192(52.5%)

学界/学生          32(8.7%)

官界                   39(10.7%)

産業界              100(27.3%)

その他         9 (0.9%)

 

職務について(366 件の回答)

教員            171(46.7%)

研究者              105(28.7%)

技術者               48(13.1%)

事務系・営業        2( 0.5%)

学生                   33( 9.0%)

その他             7( 2.0%)

 

オンラインジャーナル「Electrochemistry」について

Q1.採録された論文はすべて電子ファイルとしてフリーアクセス(インターネットにアクセスできれば、だれでも無料で講読できる)としています。このことについてどのように思いますか?

Electrochemistry誌のオープンアクセス化への対応は2019年度に大きく進めることができました。本会の編集経費におけるElectrochemistryと電気化学との分離を進め、投稿・論文加工料(APC)の改訂と整備を行いました。その結果、海外からの投稿も増加しElectrochemistry誌の出版経費はすべてAPCにより支えられるまでに至りました。一方で論文の著作権を著者が保有するようにしたこと、会員のAPCを一般の1/3に割引く等、電気化学会員がElectrochemistry誌に投稿するメリットは非常に大きくなっていると言えます。

 

Q2.分冊化に伴い、Electrochemistry誌は冊子体を廃止しました。このことについて今後取るべき方向性について、お考えがあればお聞かせ下さい。

今回、ほとんどの方からオンラインジャーナルの発行について支持をいただきました。その一方で、法人会員の方からは冊子体の提供に関する強い要望がありました。Electrochemistryの目次(Table of Contents; TOC)については現在J-STAGEのみに掲載されておりますが、今後、冊子体として発行を継続している「電気化学」誌との連携を深め、よりアクセシビリティの高い情報公開を進めることにしたいと考えております。また、「インターネットや電子媒体のシステムが将来存続するか不明」とのご意見もありましたが、J-STAGEは国内外にバックアップサーバーが置かれており、電気化学会発行誌のデータ保全が保証されています。https://www.jstage.jst.go.jp/static/files/ja/pub_darkarchive_release.pdfをご参照下さい。

 

 

 

 

Q3.どのくらいの頻度でElectrochemistry誌または本誌に掲載された論文を講読していますか?

Electrochemistryのサイトへのアクセスは直接J-STAGEへアクセスするだけでなく、様々な文献検索やホームページからのリンクも行われております。デジタル情報識別子(DOI)を活用した直接リンクも急速に普及しており、身近にElectrochemistryのコンテンツにアクセスできるようになっています。何より、Electrochemistry誌により多くの優れた研究論文が掲載されることが大切ですので、迅速な査読と会員によりフレンドリーな学会誌として改善を進めていきます。

Q4.Electrochemistry誌の利便性を向上させるために様々な取り組みをしています。このうち、ご存じのものについてチェックを入れて下さい。

Electrochemistry誌が始めた機能の改善・拡張のうち、Supporting Information(SI)の利用に関する周知が進んでいないことがわかりました。現在、SIPDFファイルによる文書ファイル以外に画像、動画、スプレッドシートなど様々な形式を使っていただけるようになっています。また、2020年に入り、多くの著者にSIの利用いただいています。論文の本筋ではなくても論証に欠かせないデータの掲載が求められる場合も、ページ増による負担をかけることなくSIとして掲載可能となっていますので、信頼性のある論文としてのプレゼンスを高めています。

Q5.2019年度からGraphical Abstract の設定が可能になる見込みです。この取り組みについてお答え下さい。(GAは本誌J-stageあるいはAbstractに掲載する論文内容をわかりやすく反映した図版です)

多くの方がGraphical Abstractを支持していただいていることを受け、Vol.88, No.3からGAの掲載を開始いたしました。また、J-STAGE上の新着情報にも掲載されております。今後のご利用を期待しております。一方で、GAの内容に関する信頼性や著者の負担に関する意見も少なからず見られました。今後GAの提出に関してのガイドラインなどの整備も進めていくように検討を加える予定です。

 

Electrochemistry誌への論文投稿された方にお伺いします。

Q6.本誌への投稿の動機についてお聞かせ下さい。(複数回答可)216 件の回答

Q7.他誌との比較において、本誌への投稿を選択する理由についてお聞かせ下さい。(複数回答可)

Q8.電気化学や工業物理化学の分野に関するご自身の研究成果を投稿するとき、Electrochemistry誌の位置付けはどのようにお考えですか?5段階でお答え下さい。(366 件の回答)

これらの項目のアンケート意見から、学会員が投稿する上でのメリットを明確に示す必要があるとの意を強くしております。どの雑誌よりも早く、著者の修正が迅速に行えるよう、何をすれば掲載に至るのかわかりやすく説明するような査読意見を目指しています。その結果、2020年5月には平均査読期間9.2日、著者修正が12.4日とし、投稿から採択までの期間をトータルでこれまでの1/4とすることができました。今後も信頼のおける学会誌を目指していきます。

 

「電気化学」誌についてお答え下さい

Q9.電気化学誌(冊子体)を読んでいますか?(366 件の回答)

「電気化学」冊子体を会員の85%が毎号読む、目次を見て必要な記事を読むとの回答が得られました。会員と学会をつなぐ媒体としての役割を果たすべく、今後も会員に望まれる記事を掲載し続けるべきとの声と受け止めております。さらに、会員のニーズ等にも配慮した特集記事、測定法の内容の充実・企画方法の検討をするとともに、特に目次が目に留まれば必要な記事を読んでもらえる可能性が示唆されており、学会HPで電化誌のHP等を設け、電化誌の記事が目に留まりやすくする改善も試みます。

Q10.電気化学誌の電子版へのアクセスの頻度をお知らせ下さい。(366 件の回答)

Q11.「ほとんど読まない」「全く読まない・2018年(創刊)以降読んだことがない」あるいはQ10で「アクセスしたことがない」と答えられた方はご意見(例えば「学生なので冊子がない」など)をご記入下さい。(34 件の回答)

  • Impact Factorが低い。インターネット上の論文検索でヒットしない。引用先としてElectrochemistryが少ない。
  • 学生なので冊子がない。教員やメンバーとの情報交換で知識の補完が済んでいる。
  • 興味がない。読みたいと思わない記事が多い。業務上必要な状況になっていない。
  • 冊子が届いたときに見ることで十分。
  • 米国のECSのように、アンケートで興味ある分野をe-mailで案内してくれると確実に見ます。

Q10、Q11の結果から、電子版(J-stage)については、大多数の会員が利用していないことがわかりました。J-stageへのアクセスの利便性のため、学会webからのリンクを近々全面的に改める予定です。編集委員会では、J-stageへのアクセス数解析も行い、会員限定記事である測定法や特集について、目次にのみアクセスが多いことを確認しております。

また、前身誌を含めて、創刊号からの全ての記事をご利用いただけるようになった電子版の良いところを、今後、会誌や学会HPで一層PRして、会員の皆様に活用いただきたいと考えております。

さらに、冊子体も電子版もより多くの会員に読んで、見ていただくためには、今後もまず会員が関心持てる記事を掲載することが、大事なことと考えております。そのため、上記のアクセス数解析を生かした掲載記事の検討のほか、今後開設する会誌HPに会員の望む記事や測定法などを聞き集めるコーナーを設けていくことなども検討していきます。

 

Q12.電気化学誌の配布先は正会員に限られています。特に学生への閲覧についてどのようにお考えかお答え下さい。(必須・複数回答可)(366 件の回答)

  • J-STAGEで閲覧できるので、雑誌の配布は不必要(このままでよい) 274件 (74.9%)
  • 有料でもよいので、希望する学生には購入できる(させられる)ようにして欲しい 91件(24.9%)

その他の意見

  • 学生の場合,毎号の購入ではなく,発刊毎に購入可能だと良い。
  • J-STAGEで閲覧できるので、雑誌の配布は不必要(このままでよい)

学生であっても会費を納入しているため,無料で配布すべき.

Q10とも関連し、学生会員には、手軽なJ-STAGEでの閲覧、活用をお勧めしていきたいと考えております。また、有償での冊子体頒布の希望も25%あることから、これについても検討進めます。さらに会員が本誌のコンテンツを手軽に検索できる工夫を検討すると共に、電子版(J-STAGE)の目次への会員外からのアクセスも多いことも鑑み、クレジットカードによる電子版(J-STAGE)での記事アクセス許可も考える必要があると思えます。

 

Q13.電気化学誌の創刊以来、この1年で幾つかの変更を加えています。このことについてご存じの内容についてチェックを入れて下さい(複数回答可)

Q14.電気化学誌の季刊化についてご意見をお聞かせ下さい。(366 件の回答)

その他の意見

  • 今のままでよいので大会の案内にタイミングをあわせてください。
  • どちらとも言えない。しばらく、試行すべき。
  • なくてもよい
  • 1回程度

その他の意見

  • わからない・何とも言えない・現時点で判断できない(11件)
  • 分冊化されたことに気づかなかった・認識していない(6件)
  • 電気化学誌が季刊化されて内容が濃くなり,Electrochemistry誌(論文誌)は速報性を維持していると思う。
  • メリットがよくわからない
  • 良くも悪くも無い

「電気化学」誌のカラー化、紙質向上等について、認知度は高いとは言えず、まだまだこれらのメリとを生かし切れていないと考えています。6月号からは、「電気化学」誌でもGAを採用しており、今後カラー記事を推奨するなどのビジュアル化を進める予定です。年4回の発行回数については8割が今のままで良いとの意見でした。今後もこの頻度での発刊の予定です。

 

Q15.Electrochemistry誌との分冊化について(366 件の回答)

分冊化については、良かったと言う意見の合計が85%と、好意的な意見が多いことがわかりました。今後は、両誌の特徴をより生かした紙面作りを進める予定です。また、併せて両誌のHPの開設と内容が重要と考えられ、委員一同で知恵を縛っていきたいと考えております。

 

編集委員会への要望

Electrochemistry誌のプレゼンスに関するご意見

  • IFが急上昇している他誌の取り組みを調査し、Electrochemistry誌に相応しいアプローチを試みるとIFの高い雑誌になるのではないでしょうか。
  • Review を増やすような試みを検討して下さい。
  • 記事を探す際に、さらに検索しやすいキーワード、ハイライトがあるとアクセスが伸びるのではないか。
  • アジアのフラッグシップ論文にすべく、特に東南アジアからの投稿を増やすために、東南アジア国からの投稿料は無料にすべきである。

いずれも重要なご意見であり、Electrochemistry誌を大事に思っていただいていることについて感謝申し上げます。Electrochemistry誌のIFの状況や向上については様々な要因や方法があります。他誌の動向を見ましても、形式を整えるだけではやはり難しい面があると言えるかも知れません。利便性向上だけでなく、掲載論文の質の向上も必要であることも論を待たないと思います。査読方針も一貫した姿勢が必要であり、できるだけ編集委員の方針が査読委員にも理解されるよう、ガイドラインに基づいた依頼を進めているところです。

ところで、幾つかのアンケート回答で見られたジャーナルインパクトファクター(JIF)に関する資料を提供させていただきます.下図にJournal Citation Reports(JCR)に掲載されたインパクトファクターおよび電気化学分野の学術誌のパーセンテージランクを示しました.

2019年のJIF1.099ですが、この数は2017-2018年に出版された記事(141)に対する2019年の引用件数(155)から算出されたものです.1997年に前身誌である「電気化学および工業物理化学」のJIFが始めて掲載されて以降、誌名の変更,J-stageの掲載,Onlineジャーナル化など様々な取り組みと論文投稿への呼びかけにより、IFは徐々に向上してきました.このこと自体,Journalに対する関心が増加していることを反映していることは間違いありません。

 しかしながら,この20年余の間,数多くの電気化学分野の学術誌が創刊され,雑誌が出版されている中,相対的な地位はPercentile Rankの結果が示しているように,必ずしも向上しているとはいえないという事実があります.現在, ElectrochemistryWeb of Scienceにおいて電気化学分野の学術誌と分類されている27誌のうち24位であり,引用数がすべてではないとはいっても,その数によってランク付けされている事実がある以上,プレゼンスを示す努力をしなければ,投稿していただいている本会会員を始めとする執筆者の期待に沿うことができないと言わざるを得ません。

 その意味でも,論文の査読・出版・公開のいずれも現状の論文誌として考えられる様々な改革を図っているところです

また、外国からの投稿論文も増えており、その質も著しく向上しています。今後、APCの運用の中で一定の基準を設けた割引・免除(Discount, Waiver)を制定し、広く論文の投稿を求めていくようにしたいと考えております。

過去の論文に関するご意見

  • 以前閲覧できた、創刊号以来の古い記事が今読めないようで、大変不便しております。
  • 現在 2005年以前の会誌記事は,事務局に問い合わせてお送り頂く形になっている形と理解しており,アクセス利便性がもう少し高まればと思うときがございます.

前身誌の「電気化学および工業物理化学」等を含め、過去の雑誌のデータサーバーに長らく不具合が生じており、会員の皆様にご不便をお掛けしておりましたことをお詫び申し上げます。2019年11月に全巻のJ-STAGE採録が終了し、創刊号からの全ての記事をご利用いただけるようになりました。また、電気化学誌の表紙にはQRコードを印刷しており、スマートフォンなどでの閲覧も可能になっております。ますますのご利用をお願いいたします。